レジを選択するということ(前編)

スーパーのレジの列に並んでいるとき、「あ~隣の列に並んだほうが早かったな」と思った経験は誰にでもあるだろう。

 

その経験が日本一多いのが私である。

 

私はレジ選択が苦手だ。

 

なるべく早いレジで会計を済ませようと努力はしているのだが、なかなかレジ選択が上達しない。

 

 

 

知らない人が多いかもしれないが、界隈では、レジ選択は競技と化している。

 

 

与えられた状況下で、レジに並んでから最初の商品にピッ!があてられるまでの時間をなるべく短縮するためにはどのレジに並べばよいかを考える競技である。

 

詰将棋とほぼ同じだ。

 

わくわくするだろう。

 

ときには、並んでいる途中でレジを変える必要もでてくる。

 

大変奥が深い競技である。

 

 

 

かの有名なレジ選択手はこう言った。

 

レジは生き物である、と。

 

変化するレジの列の中で人は考え、自らの進むべき道を選び、そして結果に一喜一憂して、反省し、次に進む。

 

レジ列は人生そのものなのだ。

 

この言葉を聞いたときはさすがに感動して、みんなでレジスターの引き出しを開け閉めして大喜びした。

 

 

 

 

レジ選択において、単純にレジに並んでいる人数だけで判断するのはド素人である。

 

 

レジを担当している人物もレジ選択の重要な要素になってくる。

 

基本的に顔をあげないパートのおばちゃんは、レジさばきがおそろしく速い。

 

そして、静かだ。

 

顔をあげないおばちゃんのレジ列に並ぶのは、レジ選択の定石となっている。

 

そういったおばちゃんたちと対照的なのは新人の若い女性で、彼女らはレジに来た人の顔を見て、あいさつしてくれる。

 

それは大変よいことである。

 

しかし、レジ選択においてそのタイムロスはあまりにも痛すぎる。

 

その点、顔をあげないおばちゃんは、あいさつをする前に手が動き始めている。

 

レジさばきに数秒遅れてあいさつがやってくる。

 

これがあたしのあいさつだと言わんばかりに、レジをピッ!とならす。

 

 

このように、顔をあげないおばちゃんが担当しているレジの列に並ぶのは、初心者でもすぐにできるレジ選択の技である。

 

ちなみにこのようなおばちゃんは、さばきが速すぎて手がたくさんあるかのように見えるため、千手観音と呼ばれる。

 

 

 

 

また、並んでいる人物も重要だ。

 

スーパーは老若男女が集う場所である。

 

カードでスマートに支払うサラリーマンもいれば、なぜか1万円しかもっていないおばあさんもいる。

 

常連のおばさんであれば、パートのおばさんと話し始めることもある。

 

空いているレジでも、ここの見極めを誤ると、かえって会計が遅くなってしまう。

 

 

この点にはいくつかの攻略法があるが、おすすめはやはりスーツ姿のサラリーマンが並んでいる列である。

 

スーツ姿のサラリーマンは仕事帰りのため、本格的に自炊しようとする人は比較的少ないと思われ、食材を大量に買い込むことはあまりない。

 

ビールとつまみだけを買う人が結構いる。

 

また、スマートに会計できる人も多い。

 

そうすると、サラリーマンは他の人の0.5人分くらいの時間で計算することが可能となる。

 

サラリーマンの列はおすすめといえる。

 

仕事終わりのサラリーマンがいない昼の時間帯であれば、ダボダボのスウェットを着た若者の列がいい。

 

彼ら彼女らはカップラーメンと飲み物だけでレジに挑んでくるから、回転がはやい。

 

 

このように、レジに並んでいる人物も重要であるのだ。

 

 

 

 

レジ選択の基礎知識はたいていおさえた。

 

あとは実践して強くなるだけだ。

 

 

 

 

レジ選択が下手な私だが、次回、みなさんにお手本を見せることにする。