レジを選択するということ(後編)

レジ選択実践編である。

 

 

 

競技の前に、レジに向かって一礼する。

 

レジ選択手たるもの、礼儀を忘れてはならない。

 

 

 

今回オープンしているレジは4つ。しまっているレジは1つである。

 

ざっとすべてのレジを見る。

 

一番右の列は研修中の新人がレジを担当している。

 

一番左のレジだけ妙に人が少ない。

 

すぐにそのレジに近づいていく。

 

担当者はおばちゃんだ。

 

 

 

 

 

顔を下げている!!!

 

 

 

 

 

千手観音だ。

 

 

 

 

この勝負、もらった。

 

応援席から「ナイス、チョイス!」というお決まりの文句が飛んでくるのは間違いない。

 

ちなみに強豪校になればなるほど、「ナイス、チョイス」の発音をくもらせて 

「ナイッチョース」と言う。

 

 

 

話がそれた。

 

それどころではない。

 

 

 

私は千手観音のレジへ駆けていく。 

 

ようやくレジの全貌が見えてきたころ、ふと下に目を落とすと、レジのカウンターの上に買い物かごが逆さまに置いてある。

 

 

 

 

レジがクローズしたのだ。

 

 

 

 

千手観音はレジさばきが速いだけでなく、レジクローズも速い。

 

完全に出遅れてしまった。

 

 

 

 

今オープンしているレジは3つ。

 

研修の人が担当しているレジだけ若干空いている。

 

あとの2つのレジの列の長さは同じくらいである。

 

新人の人のレジ以外で会計することを決めた。

 

2つのレジに並んでいる人物を確認する。

 

どちらにもサラリーマンがひとりずつ並んでいる。

 

片方の列にはカートを押しているファミリーがいる。

 

カートに買い物かごが2つ乗っている。

 

ファミリーが並んでいない列に決めた。

 

 

 

 

読みは大当たりだった。

 

並んだ列がすいすい進んでいく。

 

レジ選択成功である。

 

 

 

 

油断したその時、

 

隣のレジが突如オープンした。

 

 

 

「次でお並びの方こちらへどうぞ」

 

 

 

一瞬の迷いが生まれた。

 

 

 

 

今並んでいるレジにそのまま並んでいてもすぐに会計できるのだが、欲が出た。

 

 

 

私はオープンした隣のレジへ行こうと列を少し抜けてしまった。

 

 

 

オープンしたレジへ足を踏み入れると、そこへ血眼になった他のレジ選択手が一気に駆け込んできた。

 

 

 

私は強豪校にフィジカルで負けてしまった。

 

 

 

レジ横のガムやメントスが並ぶ棚に激しく打ち付けられる。

 

 

 

強豪校のベンチから歓声がわく。

 

 

 

 

 

新しくオープンしたレジ列に入ることもできず、元のレジ列に戻ることはできない。

 

 

 

立ち上がることもできない。

 

 

 

 

史上初のリタイアとなってしまった。

 

 

 

 

 

私は、買い物かごから商品をすべて取り出すと、かごを逆さまにして自分の前に置いた。

レジを選択するということ(前編)

スーパーのレジの列に並んでいるとき、「あ~隣の列に並んだほうが早かったな」と思った経験は誰にでもあるだろう。

 

その経験が日本一多いのが私である。

 

私はレジ選択が苦手だ。

 

なるべく早いレジで会計を済ませようと努力はしているのだが、なかなかレジ選択が上達しない。

 

 

 

知らない人が多いかもしれないが、界隈では、レジ選択は競技と化している。

 

 

与えられた状況下で、レジに並んでから最初の商品にピッ!があてられるまでの時間をなるべく短縮するためにはどのレジに並べばよいかを考える競技である。

 

詰将棋とほぼ同じだ。

 

わくわくするだろう。

 

ときには、並んでいる途中でレジを変える必要もでてくる。

 

大変奥が深い競技である。

 

 

 

かの有名なレジ選択手はこう言った。

 

レジは生き物である、と。

 

変化するレジの列の中で人は考え、自らの進むべき道を選び、そして結果に一喜一憂して、反省し、次に進む。

 

レジ列は人生そのものなのだ。

 

この言葉を聞いたときはさすがに感動して、みんなでレジスターの引き出しを開け閉めして大喜びした。

 

 

 

 

レジ選択において、単純にレジに並んでいる人数だけで判断するのはド素人である。

 

 

レジを担当している人物もレジ選択の重要な要素になってくる。

 

基本的に顔をあげないパートのおばちゃんは、レジさばきがおそろしく速い。

 

そして、静かだ。

 

顔をあげないおばちゃんのレジ列に並ぶのは、レジ選択の定石となっている。

 

そういったおばちゃんたちと対照的なのは新人の若い女性で、彼女らはレジに来た人の顔を見て、あいさつしてくれる。

 

それは大変よいことである。

 

しかし、レジ選択においてそのタイムロスはあまりにも痛すぎる。

 

その点、顔をあげないおばちゃんは、あいさつをする前に手が動き始めている。

 

レジさばきに数秒遅れてあいさつがやってくる。

 

これがあたしのあいさつだと言わんばかりに、レジをピッ!とならす。

 

 

このように、顔をあげないおばちゃんが担当しているレジの列に並ぶのは、初心者でもすぐにできるレジ選択の技である。

 

ちなみにこのようなおばちゃんは、さばきが速すぎて手がたくさんあるかのように見えるため、千手観音と呼ばれる。

 

 

 

 

また、並んでいる人物も重要だ。

 

スーパーは老若男女が集う場所である。

 

カードでスマートに支払うサラリーマンもいれば、なぜか1万円しかもっていないおばあさんもいる。

 

常連のおばさんであれば、パートのおばさんと話し始めることもある。

 

空いているレジでも、ここの見極めを誤ると、かえって会計が遅くなってしまう。

 

 

この点にはいくつかの攻略法があるが、おすすめはやはりスーツ姿のサラリーマンが並んでいる列である。

 

スーツ姿のサラリーマンは仕事帰りのため、本格的に自炊しようとする人は比較的少ないと思われ、食材を大量に買い込むことはあまりない。

 

ビールとつまみだけを買う人が結構いる。

 

また、スマートに会計できる人も多い。

 

そうすると、サラリーマンは他の人の0.5人分くらいの時間で計算することが可能となる。

 

サラリーマンの列はおすすめといえる。

 

仕事終わりのサラリーマンがいない昼の時間帯であれば、ダボダボのスウェットを着た若者の列がいい。

 

彼ら彼女らはカップラーメンと飲み物だけでレジに挑んでくるから、回転がはやい。

 

 

このように、レジに並んでいる人物も重要であるのだ。

 

 

 

 

レジ選択の基礎知識はたいていおさえた。

 

あとは実践して強くなるだけだ。

 

 

 

 

レジ選択が下手な私だが、次回、みなさんにお手本を見せることにする。

アンドロイドは美容院で髪を切るか?

世の中で最も緊張する場所、それが美容院だ。

 

 

白くて洒落た店内、キラキラした若い美容師さん、避けて通れない世間話…

 

 

そのすべてに緊張する。

 

 

私のような内向的な人間にとっては、髪を切りに行くことは試練といっていい。

 

 

ただ、今日はさすがに髪が伸びすぎてしまったので美容院に行かざるをえなかった。

 

前髪が「HORN AGAIN」のジャケットのそれであった。

 

暑くなる季節を前に、重い腰を上げて、私は美容院へ向かったのである。

 

f:id:gelatin_heaven:20200709133900j:plain

「HORN AGAIN」 the pillows

 

美容院の前に到着する。

 

胸の前で静かに十字を切る。

 

今日も、無事髪を切り終えて店から出てこられますように。

 

中へ入る。

 

髪を切っていた美容師2人と、床を掃除していた美容師が一斉にこちらを見て、「こんにちは~」と言ってくる。

 

私はどこを見ればいい?

 

目のやり場に困る。

 

とりあえず、床に向かって、娘が彼氏を連れてきたときの父親のようなあいまいな会釈をする。

 

父親になるってこういうことか。

 

世の中のお父さんはすごい。

 

 

1人の女性がこちらへ来る。

 

さわやかな笑顔を向けられる。

 

そう、美容院は彼女らにとってホームであり、私にとってはアウェーなのである。

 

すでに向こうにアドバンテージがあるのだ。

 

負けるものか。

 

私は泣きたくなる気持ちをおさえ、力の限り声を振り絞った。

 

 

 

「予約した○○です…」

 

 

 

思いのほか声が小さくなってしまった。

 

たぶん、美容師さんにはマインクラフトの住人が発する声のように聞こえただろう。

 

それでも、優しく席に通してくれた。

 

 

席に座る。

 

イスがくるっと回転する。

 

ここだけが楽しい。

 

満足した。

 

3000円を払います。

 

出口はどこでしたか。

 

え、まだ?

 

髪を切る…?

 

そうだった。危うく忘れるところだった。

 

私は髪を切りに美容院に来たのである。

 

 

 

そんなくだらないやり取りが実際にできればどんなに気持ちが楽だろう。

 

現実はまだ「予約した○○です」以外にひとことも発していない。

 

地面から伸びた無数の糸が体中を引っ張っているかのような極度の緊張状態にある。

 

逆マリオネットとでも呼ぼう。

 

 

私が笑い方を忘れていると、席に雑誌が置かれた。

 

 

「POPEYE」

 

 

私が最も読まない類の雑誌、ポパイである。

 

 

おしゃれな男たちが登場する雑誌だ。

 

 

20代男性ということで、おしゃれなものに興味があると思って置いてくれたのだろう。

 

 

正直、楽しみ方がわからない。

 

 

 

 

「トリコ」とかでいい。

 

 

 

 

あれくらい勢いよく読めたほうが気持ちが楽だし、なにより私のグルメ細胞も湧き上がる。

 

 

しかし、店内を見回してみても「トリコ」は置いてないようだった。

 

私は、きっと美容院でしか読むことのないであろう「POPEYE」を読むことにした。

 

 

 

カットが始まった。

 

これから暑くなるので、短めをお願いした。

 

 

切り始めて1分ほどたったとき、ついにあのイベントが始まった。

 

 

「お仕事は今日はお休みですか?」

 

 

 

 

 

 

会話だ。

 

 

 

 

 

 

大層に書いてしまったが、生きていれば会話が発生するのは当然であり、美容院で会話が始まってもおかしいことはない。

 

 

ただ、美容院での会話は相手のことを全く知らない以上、上澄みの上澄み、表面張力部分での会話にならざるをえず、どうしても気まずくなってしまう。

 

 

美容師さんは私のことなど全く興味もないのに会話を振ってくれて、そのやさしさが今はつらい。

 

その気がないのに、優しくしてくる男に翻弄される乙女の気持ちになった。

 

 

さっきから父親の気持ちになったり乙女の気持ちになったり、私のホルモンバランスはもうぐちゃぐちゃである。

 

 

体調を崩しそうだ。

 

 

話を戻そう。

 

 

私は、美容師さんに「お仕事は今日はお休みですか?」と聞かれた。

 

 

これは参った。

 

 

私は仕事をしていない。

 

 

毎日がお休みである。

 

 

だが、そんなことを言えば場が凍りつくことは見えている。

 

 

「ま、まあそんなところです」

 

 

と適当に言っておいた。

 

 

 

 

「そうなんですね!お仕事は何をされているんですか?」

 

 

 

 

 

 

そうきちゃった!

 

 

 

今日休みって言っちゃったから、そりゃ仕事してなきゃおかしいだろう。

 

 

 

「POPEYE」なんて読んでる場合じゃなかった。

 

誰か今すぐ私の席に13歳のハローワークを置いてくれ。

 

 

 

困った。

 

 

 

「実はアンドロイドでした!」と言うか?

 

 

 

 

 

 

 

ウィーンガシャン!ウィーンガシャン!

 

 

 

 

 

と叫びながらカクカクと店を出るしかないのか。

 

 

 

だめだ。

 

 

 

アンドロイドがひとりで髪を切りにきたとなれば、それは大問題だ。

 

 

捕まって研究対象にされてしまうだろう。

 

 

アンドロイド作戦は使えない。

 

 

 

 

仕方なく私は「じ、事務作業してます…」と言った。

 

 

なんだそれ。

 

 

つっこまれたらおしまいだ。

 

 

 

全身から花火職人のような汗を流しながら美容師さんからの言葉を待つ。

 

 

 

「そうなんですね~!」

 

 

 

 

よかった…。乗り切った…。

 

 

 

もうなんでも良い。

 

 

今なら坊主頭にしてくださいって本心から言える。

 

 

 

 

心の中の間抜けすぎる葛藤とは裏腹に、髪の毛はさっぱりとしていた。

 

 

 

 

「シャンプーしますね」

 

 

 

シャンプー台へ案内される。

 

 

この時間は心地よい。

 

 

顔にティッシュがかけられるから妙な気まずさもなく、瞑想に集中できる。

 

 

「かゆいところはありませんか?」

 

 

強いて言えば鼻の頭がかゆい。

 

 

しかしそんなボケをしても、この状況では絶対にウケない。

 

 

さらっと洗い流されてしまうだろう。

 

 

 

歯がゆい。

 

 

 

 

そう、これがシャンプーをされているときの本当のかゆみである。

 

 

 

髪を切ってもらうだけなのに、こんなに様々なことを考えなければならないこの状況の歯がゆさ、それが冷静になれるシャンプーの時間にやってくるのだ。

 

 

 

「(かゆいところは)ないです。」

 

 

 

そうやって私たちはまた嘘をつく。

 

 

自分の置かれた状況をよくするには声を上げなければならないとわかっていても、行動できない。

 

自分の気持ちをおさえ、やり過ごそうとする。

 

 

 

美容院はそういう自分の態度を見直す機会をくれる場所なのだ。

 

 

 

 

シャンプーも終わり、また席に戻り、仕上げが始まる。

 

 

 

完成すると、手鏡を持たせてくれ、「後ろの長さ大丈夫ですか?」と聞いてくれた。

 

 

後ろを見るための手鏡の角度がよくわからない。

 

 

もたもたしていると、鏡の中で美容師さんと目が合った。

 

 

 

大学の授業前、斜め前の席でメイクをしている見知らぬ女子大生と鏡の中で目が合ってしまって気まずくなったことを思い出した。

 

 

 

美容院は気まずさの学校である。

 

 

すべての気まずさをここで学ぶことができる。

 

 

 

 

 

 

お金を払い、お礼を言って店を出る。

 

 

そのお礼が 

髪を切ってもらったことに対するお礼なのか、

イスを回転させて楽しませてくれたことに対するお礼なのか、

自分の態度を見つめなおす機会をくれたことに対するお礼なのか、

気まずさを学ばせてくれたことに対するお礼なのか、

あるいはそのすべてに対するお礼なのか。

 

私にもわからなかったが、素直な「ありがとうございました。」が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出ると、さっきまで降っていた雨は止んでいた。

 

 

 

髪も気持ちも軽くなった私は、足取りも軽く、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

ウィーンガシャン!ウィーンガシャン!

あなたは今、幸せですか?

あなたは今、幸せですか?

 

 

 

 

 

 

 

そう、そこのあなた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酢豚にパイナップルを入れているそこのあなたです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体どうしたんですか?

 

 

 

 

 

きっと悩みがあるのでしょう。

 

 

 

 

私になんでも打ち明けてください。

 

 

 

 

 

酢豚にパイナップルを入れてしまうほど、大きな壁にぶち当たっているのでしょう。

 

 

 

 

迷うことはありません。

 

悩む前に、いますぐ、あなたの酢豚からパイナップルを取り出すのです。

 

 

 

 

それが、幸せへの近道です。

 

 

 

 

 

 

かつて、神は言いました。

 

 

 

 

 

「汝、酢豚に鳳梨入れること勿れ」

 

 

 

 

 

 

この一節が出てくる聖書のお話は次のようなものです。

 

 

 

 

あるところに、勉強がとてもよくできる少年と、スポーツがとてもよくできる少年がいました。

 

 

勉強ができる少年は、スポーツができる少年に対して、「こんな簡単な文章も読めないのか。」と言って非難していました。

 

 

一方、スポーツができる少年は、勉強ができる少年に対して、「こんな簡単な運動もできないのか。」と言って非難していました。

 

 

少年たちが激しく言い争いをしている中、神はその横を通りかかり、このような言葉をかけました。

 

 

「すべての物事には役割が与えられている。勉強ができる者は勉強を、スポーツができる者はスポーツを、それぞれ自由にやればよい。それが、与えられた役割というものだ。それは、酢豚が食事としての役割を、パイナップルがデザートやおやつとしての役割を与えられているのと同様である。」

 

 

 

―「汝、酢豚に鳳梨を入れること勿れ」―

 

 

 

 

 

 

 

このお話からも分かるように、酢豚は食事、パイナップルはデザートやおやつです。

 

 

 

 

 

酢豚のレシピを考えてみてください。

 

 

豚肉

 

玉ねぎ

 

ピーマン

 

人参

 

 

このどこにパイナップルが入る隙があるでしょうか。

 

 

 

 

パイナップルを入れる人間は、酢豚を闇鍋と勘違いしています。

 

 

 

 

 

はぐれメタルたちがあらわれた!

どろにんぎょうがあらわれた!

はぐれメタルがあらわれた!

 

と同じ違和感です。

 

 

 

どういうつるみ方?

何の話するの?

はぐれメタルがみんな逃げたあと、ひとりだけ不思議な踊りを踊っているけど大丈夫?

 

 

 

それです。

 

 

 

その場違い感です。

 

 

 

 

 

きっとパイナップルを入れるあなたは、色合いが良いから入れるとかいうのでしょう。

 

 

ですが、酢豚のソースがかかればパイナップルは酢豚色に染まります。

 

 

黄色は酢豚のソースの前に無力です。

 

 

 

 

 

パイナップルを入れると肉が柔らかくなるとか言うのでしょう。

 

 

肉が柔らかくなっても、酢豚全体のレベルが落ちてしまっては元も子もありません。

 

 

 

 

いいですか。

 

 

 

そのパイナップルを酢豚から取り出すだけで救われる魂があります。

 

 

 

 

 

 

いますぐ、酢豚からパイナップルを取り出すのです。

 

 

 

 

 

 

分かりましたね?

 

 

 

 

 

 

分かればよいのです。

 

 

 

 

 

 

では、今日はこのあたりで失礼しましょう。

 

 

 

 

 

 

ちょっと待ってください。

 

 

 

 

 

どうして、あなたが持っているそのポテトサラダにはリンゴが入っているのですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは今、幸せですか?

デッサンでよく使われる白いアンテナみたいな物体

あれの名前ってなんだろう。

 

 

今日、ふと思った。

 

 

 

そもそもあれに名前はあるのか。

 

 

これからあれの名前を調べてみる。

 

"あれ"を画像で紹介したいのだが、あれの名前がわからないので画像検索ができない。

 

人生最大の手詰まりである。

 

文字で説明すると、デッサンで使う白い立体で、下のほうが丸くなってるアンテナみたいなやつ。

 

ホラーゲームの敵キャラの頭部にありそうなやつだ。

 

あれが頭部で、首から下がスーツ姿のホラーゲームのキャラがいてもおかしくない。

 

全然なんのことかわからないと思うので、とりあえず、ヒットしそうなワードで画像検索をしてみることにした。

 

 

 

まず、"あれ"はデッサンでよく使う石膏っぽいやつなので、「石膏 名前」で検索してみる。

 

f:id:gelatin_heaven:20200513223606j:plain

 

 

まあそうなるだろう。

 

石膏っていったら普通は人物を思い浮かべる。

 

人物の名前が出てきて当然である。

 

それは全然問題ない。

 

しかし、よく見ると、「マルス」や「ブルータス」に混じって

 

「琴を弾く女性」

 

という方がいる。

 

この方はどなただろう。

 

しかも見たところ琴を弾いていない。

 

確かに、琴を弾いていそうな髪形ではある。

 

ただ、琴の部分が切り取られてしまっているので、本当に琴を弾いているのかわからない。

 

これは哲学である。

 

見えないのであれば正解か不正解かを確かめる術がない。

 

「琴を弾く女性」が、実は卵を回転させてゆでたまごか生卵か確認していたとしても、我々は正解を知ることができず、琴を弾いていると考えるしかないのだ。

 

果たして、彼女は本当に琴を弾いているのか。

 

思わぬところで、思慮深くなってしまった。

 

 

 

話を戻そう。

 

私は、デッサンで使うあれの名前を調べている。

 

 

続いて、こう検索した。

 

「石膏 形」

 

すると…

 

f:id:gelatin_heaven:20200513224550j:plain

 

 

見つけた。

 

右側の画像のGだ。

 

それの名前だけが知りたい。

 

もうすぐでわかる。

 

震える手をおさえ、表示された楽天のページへとんでみる。

 

f:id:gelatin_heaven:20200513224811j:plain

 

幻だ。

 

さすがはデッサンでよく使われる白いアンテナみたいな物体。

 

一筋縄ではいかない。

 

ただ、有力な情報を得た。

 

さきほどの楽天の画像に、「幾何形体」というタイトルがついていた。

 

これがあのデッサンでよく使われる白いアンテナみたいな物体となにか関係があるかもしれない。

 

「幾何形体」で検索し、サイトをまわってみる。

 

そして、ついに、

 

 

f:id:gelatin_heaven:20200513225259j:plain

あった。

 

品切れだが、そんなことはいい。

 

これを購入するつもりは毛頭ない。

 

 

 

「円錐角柱相貫体」。

 

それがこいつの名前だった。

 

f:id:gelatin_heaven:20200513230637j:plain

円錐角柱相貫体

 

 

 

f:id:gelatin_heaven:20200513225549j:plain



一発で画像検索ができる。

 

もうこいつがどこにいても見つけられる。

 

決して、見失わない。

 

 

 

「円錐角柱相貫体」。

 

確かめるように、私は何度も名前を呼ぶ。

 

 

 

 

私と円錐角柱相貫体を包むように、どこかで静かに心地よい音楽が鳴っている…。

 

その音は、まるで琴のような音色だった。

静岡の鵺(ぬえ)

今日はご当地キャラの日である。

 

「ご(5)とう(10)ち(1)」と読む語呂合わせかららしい。

 

最近は下火になってきたように思うが、一時期はまさにご当地キャラ戦国時代といった世相で、とにかくキャラクターを出したもん勝ちみたいな風潮になっていた。

 

検索してみると、私が住んでいた静岡県にもご当地キャラがわんさかいた。

 

見たことがあるキャラクターから、やっつけ仕事と思われるようなキャラクターまで存在した。

 

その中で圧倒的存在感を放っていたのは、やはりしずな~びであった。

 

 

f:id:gelatin_heaven:20200511220030p:plain

しずな~び

 

静岡県民なら誰しもが一度は見たことがあるキャラクターである。

 

静岡のご当地キャラ界を牽引している。

 

静岡のご当地キャラはしずな~びには頭が上がらない。

 

 

しずな~びの公式サイトのプロフィールにはこう書いてあった。

 

静岡県が大好きで、耳は富士山、尻尾がウナギ、鈴はミカンがトレードマーク」

 

 

 

静岡の鵺(ぬえ)である。 

 

別名「駿河鵺(するがぬえ)」という妖怪。

 

静岡が大好きでよかったな。

 

これで静岡が嫌いだったら地獄である。

 

いや、この姿で生まれてしまったから、静岡を好きになるしかなかったのかもしれない。

 

そう考えると大変かわいそうになってきた。

 

生まれたときから耳が富士山、尻尾がウナギ。

 

両親が「静岡の案内をする子になるように」という意味を込めてつけたしずな~びという名。

 

静岡の案内をすることを運命づけられた生命体。

 

「静岡が大好き」と書かれているだけで、ひとことも「静岡生まれ、静岡育ち」などと書かれていないことからも闇を感じる。

 

全然別のところで生まれたのに、静岡のことを案内し続けているのかもしれない。

 

ただ、この見た目ではほかに転職先を見つけることも困難である。

 

しずな~びがこの仕事を心から楽しんでいることを心から願うばかりである。 

赤あご電車男

今日は「国際ノーダイエットデー」らしい。

 

ダイエットの潜在的な危険性と成功の可能性に対する認識を高める日なのだという。

 

つまり、食欲を解き放つ日である。

 

小学生時代の私に聞かせてやりたい素晴らしい日だ。

 

 

 

 

私は小学生時代、クラスで1、2を争うデブキャラであった。

 

とにかく食欲がすごかった。

 

常に右手にソフトクリーム、左手にマルセイバターサンドの箱を持っており、さながら自由の女神像であった。

 

主食は左手に持ったマルセイバターサンド。

 

一日で箱にぎっしり入ったバターサンドをすべて平らげてしまう日もあった。

 

六花亭の文字通り太客である。

 

野菜は食べない。

 

当時まだ野菜の存在を知らなかったと思う。

 

 

 

あごは二重。ヘルメットをするとあごの肉を巻き込んで毎回真っ赤に腫れ上がる。

 

赤あごと恐れられた。

 

魚の特定地域での呼び名みたいだ。

 

 

 

プールの授業において、バタ足で上がる水しぶきの量が尋常じゃない。

 

富嶽三十六景

 

葛飾北斎は私の泳ぎをプールサイドで見学して、あの絵を描いた。

 

 

 

少しでも運動しようものなら、

フシューーー!!!

という音を口から出す。

 

多分みんな電車が止まった時の音だと思っただろう。

 

私の呼吸の音である。

 

 

 

そんな私であったから、あの頃は毎日がノーダイエットデーであった。

 

そう考えれば、小学生の私に「国際ノーダイエットデー」の存在を知らせても無意味というものだ。

 

 

 

過度なダイエットはよろしくないが、暴食もまたよろしくない。

 

赤あごと呼ばれないために、

 

富嶽三十六景を描かれないために、

 

電車と間違えられないために、

 

明日からは適切な食生活を心がけていきたい。