キテレツ大百科に最終回があった
「アニメ不毛の地」と呼ばれるほどアニメを放送しない静岡県という県がある。
今でこそいろんなアニメを放送しているようだが、私が静岡に住んでいた頃は本当にこち亀とキテレツ大百科しか放送していなかったように思える。
かくいう私もキテレツ大百科をずっと見てきたからこそ、「~なり」というしゃべり方になってしまったのだと思う。
時は流れ、私は静岡県を飛び出して、キテレツ大百科のことを思い出すことも少なくなった。
「~なり」というしゃべり方もたまにしか出なくなった。
それからまたさらに時は流れ、静岡を出ておよそ7年が経ったある日のこと、友人からキテレツ大百科の最終回をぜひ見てほしいとの連絡が入った。
キテレツ大百科。懐かしい響きだ。静岡県民からするとドラえもんよりしっくりくる。
ただ、最終回は今まで見たことがなかった。
これは見なければならない。
少年時代の自分に会いに行くような気持ちで、私はキテレツ大百科第331話「愛のフィナーレ!さよならコロ助大百科」を見始めた。
開始1秒。
最初の衝撃が走る。
カーン!カーン!
嘘だと言ってくれ。
最終回までずっとこのオープニングなのかよ。
親の顔より見たコロッケの作り方。
コロッケの気分じゃないのに夕飯時に必ずコロッケのことを思い出させるコロハラ(コロッケハラスメント)である。
小学生のとき、「今日はコロッケのクチじゃないよ!」と何度テレビに激怒したことか。
コロハラでノイローゼになったのはおそらく私だけではないと思う。
あとキャベツ用意してくれ。
コロハラが終わり、物語は学校から始まる。
先生「この問題が解けないやつは、6年生にあがれないぞ~」
いやえげつないな。
そんな人生を変える1問を簡単に突きつけるな。
あと生徒のカラーシャツの色のかぶらなさすごいな。
もう全色揃っちゃってるだろ。色の死角がないよ。
そんな学校でのほのぼのとしたシーンの後に、主人公キテレツの家に泥棒が入ったとの知らせが入る。
急いで家に戻ると、何よりも大事な「奇天烈大百科」と「如意光」が盗まれたことに気が付く。
「キテレツ大百科」と「如意光」だけを盗むということは、おそらくただ者ではない。
キテレツは過去をうつす回古鏡改を発明し、犯人の後を追う。
そして、最終的に友人ブタゴリラの父、熊八の目撃証言によって、犯人が「キテレツ大百科」をゴミ収集車の中に捨ててしまったことを知る。
その証言の中で、犯人の顔が視聴者に明かされるのであるが、犯人はなんとこの人だったのである。
いや、誰??
「キテレツ大百科」を盗むなんて明らかにただ者ではなく、最強の敵として登場させればそれだけで話数をかせげそうなものなのだが、本当にただの空き巣だった。
おいしいところを全部持って行かれてしまった。
その後キテレツは、「奇天烈大百科」の生みの親であるキテレツ斎から大百科を譲り受けることを思いつき、航時機(タイムマシン)で江戸時代へタイムスリップする。
そしてなんやかんやあり、コロ助が江戸時代に残ることになる。
いや、なんで?
待てコロ助。早まるな。どうした。
そんなからくりジョーク、クスリとも笑えない。
たしかに、自分の生みの親ともいえるキテレツ斎と一緒に暮らしたいという気持ちはわからなくはない。
ただ、残されたキテレツや、友人たちや、幼少期からずっとそばにいた静岡県民たちはどうすればいい?
その風呂敷の中には数えきれないほどの静岡県民たちの思いが詰まっているのである。
そんな簡単に江戸時代に残る決断をしてよいのか。
「わがはい、江戸時代のほうが似合うような気がするなり」
フィーリング?
その勢い、江戸時代に合ってなさそうよ!大丈夫!?
キテレツもなんとか言ってやれよ!
「コロ助、さよならは言わないよ」
あれ!?
そうなる!?
あんなに仲良かったじゃん!
少しは止めてくれたってよくない?
コロ助行っちゃうよ?なあ!
「コロ助、今度会うときは、キテレツ斎様に負けない発明品を持っていくからね、21世紀には、さ!」
おい待ってくれ。
発明のしすぎで疲れちゃったのか?
尺はあとわずか。
ここからどうなる?
~♪はじめてのチュウ
泣いた。